国際福祉機器展は、ハンドメイドの自助具から最先端技術を活用した介護ロボット・福祉車両まで世界の福祉機器を一堂に集めたアジア最大規模の国際展示会です。その国際福祉機器展ですが、コロナ禍では開催中止となった年もありました。
今年はリアル展とWeb展の両方の開催となっています。
第49回国際福祉機器展 H.C.R.2022 開催概要
国際福祉機器展ホームページ(開催概要)
https://hcr.or.jp/exhibitions/detail
国際福祉機器展 H.C.R.2022
会場・東京ビッグサイト 東展示棟1〜6ホール
会期:2022年10月5日(水)〜10月7日(金)
10:00〜17:00(10月5日及び6日)
10:00〜16:00(10月7日最終日)
弊社も、久しぶりに会場に足を運びましたので、現地で見学したことをレポートでお届けします。
今年のリアル展で、福祉車両のカテゴリーで出展していた企業は、日産とマツダの2社のみです。
トヨタは「移動機器(車いす)」という分類で、福祉車両ではないブースでの展示を行っていました。
それぞれの展示内容についてレポートします。(レポートは見学順)
マツダ
コンセプト
「Self-empowerment」
「すべてのお客さまに “走る歓び”をお届けしたい」
展示車両
・MAZDA MX-30 Self-empowerment Driving Vehicle
https://www.mazda.co.jp/cars/mx-30/grade/sedv/
・MAZDA ROADSTER<スポーツ>Self-empowerment Driving Vehicle
https://www.mazda.co.jp/cars/roadster/grade/hand_control/
会場の様子・展示内容
マツダのブースは、車いすユーザーも含め結構な人出。 今回は、マツダが展開している福祉車両の中から、Self-empowerment Driving Vehicle(運転補助車)に絞った内容でした。
毎回、マツダはとてもスタイリッシュな雰囲気にブースを仕上げてきているが、今年もダークな床やパネルに白い車体が映えて格好いい。とくにROADSTERは写真を撮影する方が多かったと思う!
MX-30では車いすユーザーに、運転席への乗り降りをスムーズにサポートする移乗ボードを使って係員の方が説明をされていました。
また、シミュレーションコーナーでは、実際のSelf-empowerment Driving Vehicle装置が置かれており、実際にアクセルリングやレバーブレーキなどが体感できるようになっていました。
どのパーツもシックにまとめられた内装を壊さない、周りに溶け込む色デザインだったのが良いと思う。 全体の印象として、男性がメインターゲット層という感じだね。
前と後ろのドアが観音開きになっていた!ブースで流されていた動画で、運転者の乗り込み方法や、車いすを前位から後部座席に乗せる様子を見たのだけど、車内に車いすを収納する動作の時に、車いすの車輪が洋服に触れてしまう可能性があるのが気になった。
車いすを持ち上げて、後部座席に移すためには腕の力がかなり必要かも。
いただいた資料によると、手動運転と通常運転の切り替えが簡単にできることから、友人や家族と運転を容易に交代しながらドライブを楽しめるとのこと。これこそ「Self-empowerment」と「すべてのお客さまに “走る歓び”をお届けしたい」という願いの具現化だと感じました。
日産自動車
コンセプト
「出かける喜びを、一人でも多くの方へ 」
展示車両
・キャラバン チェアキャブ 車いす+1名仕様
https://lv.nissan.co.jp/LVCAR/CARAVAN/CHAIRCAB/
・セレナ チェアキャブ スロープタイプ 車いす2名仕様
https://lv.nissan.co.jp/LVCAR/SERENA/SLOPE/
・ルークス 助手席スライドアップシート ハイウェイスターX
https://lv.nissan.co.jp/LVCAR/ROOX/SIDESEAT/
会場の様子・展示内容
日産自動車の展示は、車いすのまま乗車できる2台、助手席昇降シートタイプの1台、合計3台でした。 ブース自体は明るくて車体が見やすい感じ。どの車も具体的な説明を聞きたい人が集まってきているという印象でした。
もう少しどういった装置が乗せられた車なのかが一目でわかるような展示物があればもっとよかったかも。
今回は福祉車両の展示が2社と少なく、またそれぞれのブースもいつもよりも狭いために、3台の車が並べられているとかなり狭いと感じたなぁ、本当はいろいろな角度から確認したかったけれど、回り込みにくいところもあって、見学がちょっとしづらかったかも。
今回初出展となるルークス(コロナ禍でこれまでは展示ができていなかったそうです)では、実際に助手席が昇降するところや、スライドドア側につけられたオートステップの実演を見せてもらいました。
シートの張り地の色や形状が周りに溶け込むように配慮されたデザイン、危機管理に優れたステップの出し入れなど細かいところまで配慮されているといった印象です。
軽自動車にしては助手席の間口が広くて、シートの回転、昇降も問題なさそう。
スライドドアも開け放つと大変開放的な空間で、スーパーハイトワゴンの実力を見せつけられた感じ!
ルークスでは、ステップ部分の出し入れについて実演していただきました。
後部座席のところに出ているステップですが、この出し入れは自動で行われます。助手席のドアは閉めず、後部座席のドアだけを閉めたときには、以下の画像のようにステップはまだ出た状態です。
助手席と後部座席、両方のドアを閉めたとき、自動で以下の画像のように収納される仕組みになっていました。
ステップの出し入れが自動だと、うっかり収納し忘れの恐れもないし、安心だなという印象。
また、ドアを開いたら自動でステップが出てくるのも感動的でした!
セレナでは、車いすはどこに配置するのか、そのときの座席は?といった質問に応えていただきました。
詳しくは、上記に挙げたセレナチェアキャブのページにシート配置図が掲載されているのでそちらをご参照ください。
特長は使い方に合わせて様々なバリエーションが可能だということです。
車いす1台乗せだと、他に運転者を入れて最大6名乗車可能。
車いす2台乗せでは、同3名。
以下の画像は2台乗せるスペースを撮影したものです。このように前後で車いす2台が収納できます。
以下の画像は1台乗せで最後部に3人が座れるシートを出している様子です。
また、サイトによるとストレッチャーも載せられるとのこと。
いろいろなセッティングができることで、ドライブシーンの可能性がとても広がる車だと感じたなぁ。
車いす2台の場合、後ろに収納する車いすは、少し斜めになった状態での収納となるとのこと。
折り畳まれた最後部座席を展開していただいたら、なんとベンチシート型の3人座れる座席になったので、ちょっとびっくりしました。
キャラバンのチェアキャブは、ルークスとは異なり、ステップがこんな感じになっていました。
ステップの段差のところがオレンジ色に光っていましたよ。2段のステップは段差が高くないので、乗り降りがしやすいのではないかと思います。それにしても、キャラバンは大きい!
トヨタ自動車
コンセプト
「すべての人に快適で素敵な暮らしをサポートいたします 」
「Mobility for All すべての人に移動の自由を」
※今回展示している製品は、未来の高齢者・障がいをお持ちの方々にも安全で安心な移動の提供ができる技術が搭載された開発品です。
展示内容
・車いすユーザー向けC+podコンセプト
https://toyota.jp/cpod/index.html ※C+podのブランドページ
・悪路走破性を兼ねた電動車いす JUU(ジェイユーユー)
・車いすワンタッチ固定装置
会場の様子・展示内容
トヨタは、今回の国際福祉機器展においては、従来の福祉車両ラインナップの展示はなく、未来の高齢者、傷がいを持った方々にも安全で安心な移動の提供ができる技術が搭載された「開発品」を紹介。
とにかくすごい人でなかなか質問もままならないほど。流されている動画や説明ボードを必死に読む。
見学には車いすや介助犬を連れた方も多くいらしていて、狭いスペースでの紹介だったこともあり、車いすの方がなかなか移動ができなくて困っていらしたという印象。今回の国際福祉機器展の福祉車両のブースもそうだったけど、ちょっと狭すぎて見学がしづらいと感じたな。
C+podは、暮らしのそばに、超小型BEVがブランドコンセプト。※BEV:Battery Electric Vehicle
ここでは、超コンパクトボディが特長の電気自動車を車いすユーザーも使えるように工夫された開発モデルが展示されていました。
※ブースの配置の関係と混雑で正面から撮影ができず。以下のボードの画像が見づらくて申し訳ありません!
車いすユーザーが車での外出を気軽に行えない要因の一つとして、近年利用者が増加しているため、身障者用の駐車場が確保できないことが挙げられます。C+podは超コンパクトボディなので、この車幅だと身障者用ではない駐車場のスペースでも、十分にドアを開けて乗降できるのがまず利点とのこと。
そして目を引いたのが車いすの収納方法です。
車いすから左ドア側に寄った運転シートへ乗り込んだ後に車いすをかかえながらスイッチを入れると、シートがハンドルのある右ドア側に移動し、空いた左側のスペースに車いすをそのまま乗せられるという仕組みです。
実際に動作させている動画をみたけど、車いすを持ち上げて右から左に体をひねって持ち上げて移動させる必要がないので力があまりない人でも対応できそうだし、なによりも服が汚れないのはいい!
そして、今回展示されていたC+podには車体後部には、ハンドルがついた機械がついていました。これは車いすとドッキングできるモバイルバッテリーを積んだ運転装置だという。以下の写真のように車体後部に取り付けて使うそうです。
移動先のモビリティも拡充する目的のためのものだそうです。
ただ、現状では様々な問題があり、販売の実現にはもう少し時間がかかるとのことでした。見学されている車いすユーザーさんたちの反応からすると、とても興味をもたれているようでした。
また、車いすを乗せるときの仕組みとして、「ワンタッチ固定装置」についての説明を伺いました。
車いすを車両にのせるとき、その固定作業にかなり時間がかかるそうですが、この「ワンタッチ固定装置」の場合は、指定された場所に車いすを移動させるだけで固定が完了し、もしも固定がうまくいかなかった場合にはアラームでお知らせしてくれるという仕組みです。
ハイエースのリフトに取り付けられていた、この簡単で確実な車いすワンタッチ固定装置は、おそらく施設関係者だろうと思われる方々の熱い視線を集めていた!
送迎をされている方は、毎日何度も行う車いすの固定作業なので、簡単で安全にできる方法があれば安心だろうなぁ。固定位置は全ての車いすで統一されているとのことだったけど、車いすの足元に固定するためのバーのようなものを車いすにどのように取り付けるのかが掲示だけではよくわからなかったのは残念。
上記の製品ほかに、床の段差や凹凸などの障害にも屈せず走る車いすJUUの実演展示もありました。
トヨタブースでは来場者に対して「トヨタ技術選挙」と題したアンケートを実施していました。
いいね!の投票数が、1,500件を超えた展示物は、来年バージョンアップして展示・製品化するための開発を進めるそうです。
「誰ひとり取り残さない」というトヨタの強い意志が感じられた展示だったなぁ。
JUUで階段を登っていく動画を見て驚いた!ただ、登るときにガクンガクンと大きな音と車いすに乗っている方にかなり衝撃がありそうな動きだったので、今後そのあたりも改善されるのかもなぁと思いながら見ていました。
それと、駆動部に使われているデンソーの電動パワーステアリング用モーターコントロールユニットや車両制御ユニットも展示してありましたよ!メカ好きにはたまらない展示!
総括
今回の国際福祉機器展に出展していた自動車メーカーが少なかったことはとても残念でした。今回リアル展に参加していない自動車メーカーのうち、ダイハツがWeb展で製品を紹介していますが、Web展ではやはり車の特徴は分かりづらいと感じます。
しかし、コロナ禍での展示会開催や出展はとても難しく、特に福祉関係の展示は難しい面も多いとも思います。今回見学していても、スタッフの方が展示物を頻繁にアルコールで拭き取り作業をしている様子をあちらこちらのブースで目にしました。こうした状況の中でどのように展示をすればよいのか考えさせられる場面も多かったように思います。
さまざまなメーカーの福祉車両が集まる展示会は、利用したいと考えている人にとって、実際に車を見て、乗って、操作してと実体験でき、担当の方に直接質問ができる大事な機会だと思います。毎年、工夫を凝らした福祉車両が出てくるのを楽しみにしている人も多いと思います。
次回の展示会の頃には、コロナ禍が収束して、以前のように多くのメーカーが参加できるような場になればと願わずにはいられません。
以上、2022年のリアル展のレポートをお届けしました。